孫二人の入学試験は終了す何はともあれ一安堵なり

佳き事や悪しき事ありて歳は暮れ心静かに除夜の鐘聞く

夜遅く電話の鳴りて驚くに孫懐妊のいと佳き報らせ

「福島」に懲りもせずして再稼働次の地震は来ぬ積りかや

運動会終へて行事も峠越し庭の片隅にこほろぎの鳴く

厳しき夏八十路の身には堪へたり涼風受けて快復したし

晩年を筆一筋に尽したる義父の背中は温くも広し

早朝に電話のベルのけたたまし胸騒ぎしてとれば訃報ぞ

北陸路にはるばる求めて二十年百株近き水芭蕉咲く

想ひ遂げ大学に向ふ兄送る妹の顔に涙一筋

孫二人揃ひて悲願の入学ぞ少し遅れて桜ほころび

をさまらぬ熊本地震恐しや受難の民の心思へば

満開の桜散り逝く夕暮れを義姉は召されて黄泉に旅立つ

 山下 照夫 作品集