庭先の小枝の雪がほほに落ち膝の辺りに寒気増し来る

入口で我「松潤」に微笑まれシャイな我「潤」の「ティシュー」を買ひをり

カイロ貼り定年近き唇へパステルピンクの紅を差しをり

頬紅の色問ふ友よ今の宵は我の幸せ多き予感す

優先席は寝ごこち良いか「カモ服」よゆづれとは言はずその脚どけよ

形良きパープル色のくちびるの恕り鎮まるを今朝も待ちをり

見つめられ頬を寄せられめろめろよ「まんままんま」と孫ゆずき一歳

「老人会で大物言ふには歳が足らん」と米寿の二人は小声でつぶやく

「いいわよね恥かしくなんかないわよね手書きの年賀状出したって」神様

目の前のピアスも揺れて睡魔呼ぶ「ケアマネ」研修午後の講義よ

落ちさうで落ちぬズボンの少年が腰を振り振りバス停に待つ

半月が蛤の如く見ゆる夜は目薬さして早く眠らな

三つ編みの少女に会ひし晩夏の夜はアイスコーヒーのシロップを増やさむ

老人ホームに朝毎歌詠む嫗あり墨する音させ今日が始まる

真夏日にかしましき子の披露宴は学園祭の延長の如し

向日葵も更年期かと水をやれど気怠さ残る晩夏の朝よ

 橋本 巴子 作品集