わが詠むは叶はざりければ村照らす真夜の満月に名句をしのぶ

絶好の移植日和といらだつに電話の向うの友には届かず

「瑞宝雙光章横山猛」不動なる星は美作に永久に輝く

被災地に思ひはせつつ雪の朝を食ぶるこの飯痛く喉をゆく

残照のエールを受けつつ柿一葉葉元ひねりてひらりと落つる

蕎麦まけば「ハ」の字の逆さの足跡が千鳥にならぶか測りしごとくに

久びさの雨に大地は濡れ羽色菜園のよろづも鮮やかなりけり

草刈るを休みて畦に寝ころべばほどよき風の吹きてくるなり

 井上 さかゑ 作品集