飢饉には食せしとかやしびれの根今その花が岸を彩る

若くして逝きにし夫のうつしゑを見上ぐる我は卒寿に近し

道の端の赤い鳥居をかぞへつつ奈義の友おくるディサービスの自動車

高岸に群がり咲ける彼岸花草刈る人の気配りやさし

宿の庭の楓の紅葉に魅せられて撮りたる写真少し若やぐ

孫の家に四たり目三女うまれ来てひなまつりなりぢぢばばも寄り

艶やかに変身したるわが孫の女形の写真みとれてをりぬ

巻ずしの得意のいとこ事ありて今宵も大巻届け来たりぬ

新聞にのりゐるといふ書道展のひ孫の名前虫めがねでさがす

花の下に優勝の宴ひらかれぬ球を打たざる我も祝杯

小犬待つ奈義の人をば先に送るディサービスの帰りの車は

炎天にトタンの屋根をば張り換へる子の鎚音は高くひびけり

庭木の下を這ひて草引く片かげにつる草からむ秋海どうの花

早春の日差し背に受けゑんどうの草を取りをりひざをかばひて

桜のがくの落ちゐる坂を杖つきて出湯に行きゐるわが影法師

川向うの稲田のかがしのガードマン三体仲よく田を守りをり

苅田の岸に賑やかに咲く彼岸花愛でつつ行けりディサービスに

若き日になかりしことを体験し老いへの道を歩みて行きをり

陽に向ひあでやかに咲く福寿草我もならひてかがやきたかり

やはらかき刷毛の様なるねむの花咲きたる下をデイサービスに行く

老い我をいたはりくるる子のありて今日も買ひ物に車で行けり

 岡田 利子 作品集