新年の孫らと遊ぶトランプの勝ちに占ふ百までの生

廃校の校庭に立つ大公孫樹色鮮やかに青空を突く

発表の日までに喉を治さねばと日々詞を書きてはうらにて吟ず

仕分人我はまどへど皆捨てぬ天国の夫に詫び入れながら

清書する短歌に必死の我を見て「穴熊か」と冷房に灯に付け呉るる子

紫陽花を見に来たれるに雑草を行く先先で友は抜き居り

春祭り祝詞の最中に百足出づすかさず殺すか神に詫びつつ

あま茶祭り稚児が着飾り通る辺に五月の風受け清むる我等

「大聖寺」大護摩の煙は黄銅色ばちばち音たて天をめざすも

昨日見しに雪に埋もるる福寿草明日は黄花を見せて呉るるや

おばあちやんは「KY」だねと孫の言ふそれでいいのよのんびり生きるの

初孫の成人式なり「従妹らの手本となれよ」とメール打ちやる

長の娘に餅を送れば「今着いたよ献立変更粕汁にします」と

大椿伐り倒されて酒蔵の土壁にからむ赤き蔦見ゆ

山々にシルクのマフラー巻くがにも浮きゐる霧よ朝光受けて

「最低でも十年は生きてねドライブに連れて行くから」と孫のファックス

車椅子に乗る人押す人歩く人施設の人らは法被を着こなし

賑やかに何を喋るかつばくらめ我は静かに「龍」読み居るに

新緑の山みづみづしくも濃淡を織りなし空に浮き出づるがに立つ

富士山を視野に歌詠む人のあれ我は峡にて歌を詠めども

お舅がかまくらの如き大雪に一人籠りしは幾年前かと

幾度か窓のぞき見れど一向に動かうとせぬ厚き黒雲

錦なす山にさ霧の棚引くが昇りくる日に消えてゆくなり

隣村の御輿担ぐに我が村の若衆が加勢し威勢よく来たり

体重が日毎に増すを気にしつつ実りの秋を食べつくし居り

「詩吟する人に惚けたは聞かんなあ」の先生の話に胸撫でおろす

我が家も娘のマンションも同じ日に燕四羽の産まれ巣立つとは

田舎に住み蚯蚓に悲鳴をあげるなど以ての外ぞ穴あらば入りたし

切株に年輪のみが残りをり王子神社の大公孫樹二本

萌黄色に芽吹き来たれる柳の木この嫋やかさ我にはあらざり

漲りし大池一面さざなみは日差しに我が待つ真珠のごとし

梅・椿くれなゐ深き花が咲き地の面も我をもくれなゐに染む

足首のボールが足の向うに置けず脚が長いか腹が出すぎか

公孫樹より垂れ下がる蛇の脱殻を取れと言ふはや巳歳の孫が

「インフル」に苦しむ孫の治癒祈る早朝懸れる大いなる虹に

ウォーキング又始めると言ふ我に「ころばないでね」「三日坊主よ」と孫

ためらへど独り観に来し「おくりびと」我にはきつかり夫亡き我には

ジャスミンの咲きほこりたる垣の上に虻が飛び交ふ卯月の風に

咳払ひも「忘れとんじやけど」も録音され詩吟の先輩のテープが届く

お舅がかまくらの如き大雪に一人籠りしは幾年前かと

幾度か窓のぞき見れど一向に動かうとせぬ厚き黒雲

錦なす山にさ霧の棚引くが昇りくる日に消えてゆくなり

隣村の御輿担ぐに我が村の若衆が加勢し威勢よく来たり

体重が日毎に増すを気にしつつ実りの秋を食べつくし居り

「詩吟する人に惚けたは聞かんなあ」の先生の話に胸撫でおろす

我が家も娘のマンションも同じ日に燕四羽の産まれ巣立つとは

田舎に住み蚯蚓に悲鳴をあげるなど以ての外ぞ穴あらば入りたし

切株に年輪のみが残りをり王子神社の大公孫樹二本

萌黄色に芽吹き来たれる柳の木この嫋やかさ我にはあらざり

漲りし大池一面さざなみは日差しに我が待つ真珠のごとし

梅・椿くれなゐ深き花が咲き地の面も我をもくれなゐに染む

足首のボールが足の向うに置けず脚が長いか腹が出すぎか

公孫樹より垂れ下がる蛇の脱殻を取れと言ふはや巳歳の孫が

子供神輿の声高高と盛り上る老人ホームの差し入れジュースに

大正生まれの村念仏の大数珠は八十余年を受け継がれ居り

黄昏の山を過りて霧浮かび明日も雨ぞと言はぬばかりに

水張田をがうがうと行く耕運機巨大なる波をつぎつぎ作りて

をりふしに「影を慕ひて」爪弾きゐし夫の遺影に我は琴弾く

姑の植ゑにし紅梅ちらほらと咲き初むるなり夫の葬儀に

詩を吟じ腹の底から大声を上げてひと日の憂さを晴さむ

久久に「おはら庄助」してみれば此れはよきもの身上潰すか

星二つ傍に置きて三日月は大きく笑ふピエロの様なり

色鉛筆の二十四いろを使ひても錦織りなす山は描けざり

秋祭りを明日に控へて御神燈暗き路地裏をほんのり照らす

青空に両の手上げてテープ切るリレーの男の子よしたたる汗よ

「きんちゃい館」の祭で踊る炭坑節まん丸月の昇りて明るし

燕の子青田に腹をすりつけて10羽あまりが上下に飛び交ふ

橋より大川に長き釣竿差す男見つつしびれ切らす我

重きかひの桜の蕾も綻びて二人の孫の入学祝ぐがに

「ばあちゃんもあがれあがれ」と「オッパッピー」で我を誘ふか向かひの坊は

一面に雪の覆へる竹が枝の雪しなやかに積もる山裾

満天の星眺めつつ行く年と来る年迎ふ宮当番に

手ばなされし風船真青き空めざし赤く丸きが小さく小さく

力一杯児の出す声も山彦も聞こえずならむ閉校の村

助け合ひ頑張り競う運動会に六年は二人閉校する「吉野小」か

夕立の止みたる後の茜空山も田の面も染めて静もる

秀乃屋に国屋油屋と数珠の文字かすみて並ぶなつかしき屋号

天国に「連れてってね」と言ふ幼何時行くのかと楽しみて待つ

兄の叙勲我がはらからの誇とて新聞の切り抜き父母に供ふる

家ごとに麗しきひひな飾られてくまなく歩む古き大原

大護摩のもくもく昇る白煙の時にうねりて昇竜と化る

十年を麻痺に耐へ来し母が今生きて座さば良き介護せむに

ライランに「雨降つとうよ」と孫言へば「アメフト?」と言ひて窓をのぞきぬ

発表会「おんちよろきよう」のばあさんに孫はなりきる声張りあげて

友の歌NHKに選ばれて一人で拍手す大声出して

孫と習う生涯学習篠笛を作れど未だにお通にはなれず

モロヘイヤ・ゴウヤ・オクラを賜はりて今年の猛暑にはこれに限ると

何処より来たりしならむや藍深き朝顔咲ける川添ひの土手

孫娘月見だんごを持ち呉れぬ今日中秋の名月なると

焼きたての秋刀魚におろしに柚子しぼり無性に食べたし付き添ひ二年目

付き添ひも住めば都の二畳の間わが城として趣味に埋もる

「ばあちゃんの手どうして木が入れてあるの」と聞く幼の手羽二重餅なり

窓ぎはに遊び来たれる雀らよ鳥語を学びて次は話さむ

病室に娘が持ち呉れしカサブランカ七日を過ぎしも漂ふ香り

義兄は逝き姉に賀状は出せぬまま押し花をせしはがきにて慰む

神神しき巫女となりゐて舞ふ孫よ「樫村神社」の落成式に

来年は閉校となる「巨勢小」の人文字写すかヘリコプターは

墓掃除に先祖の話に花が咲き墓の動いた様な気がする

幼児に内緒話は通じない口に指当てそっくりしゃべりぬ

「巨勢小」の最後とならむ運動会みんなで歌ふ校歌よ轟け

買物に手間取りしわれに「日本中廻って来たか」と夫は言ふなり

甘きものにはあらねど「おまえに」の歌の如くに「そばにゐてくれ」と夫

銀行でもし襲はれたらば試さんか若き日習ひし護身の術を

明かり消し部分月食やっと見ぬ煌きてゐる星一つ連れるを

臥す夫は打ち出の小槌のあるごとく孫来りややれよ子が来りや出せ

慰問に来し吉野小五年六名の黄門劇の気迫に喝采

娘に説教しかけたならばじゃあ又と「携帯」ピーと切ってしまひぬ

夜を婿は自動二輪にて丹波より夫の好みの蕎麦持ち呉れつ

鯉にふをやる孫を見て白鷺が長き首をば傾げて寄り来る

忽然と消えし我かや夫眠る間に手術ぞ為すすべも無く

咳払いも「忘れとんじやけど」も録音され詩吟の先輩のテープが届く

壮絶なる雷雨の後の茜空沈む夕日に細き黒雲

 原田 順子 作品集