補聴器を試さむものと思へどもこれがなかなか何げなくが難し
「目くじら」の行方が知れぬ探す気のこの頃うすれ我が道をゆく
押しピンをひつくりかへして散らはりてやつきに拾ふひとつひとつを
鼠奴を餌付などして粘着のシート仕かける宵となりたり
うつかりと三時に訪うて鯛焼きの筒切りなどをよばれて戻る
電算器を終日打ちをれば電話機のプッシュ間違ふ並びが逆で
雪の嶺は遠のきにつつ崖の凍解けはじめたり塊こぼしつつ
入口に音のするたび腰浮かす去に拵への出来たる外孫
目のすずしき歯科医師なり待てよ待てマスクの下は出っ歯ならむや
公園は除草剤撒きし枯いろぞ市の仕業なり姿勢を見たり
運用と言ひつつ賭博に手を染めて国民年金破綻寸前
向日葵と今朝はぴたりと目が合ひぬ闌けるにつれて俯向きたれば
番号を忘れてしまひ任せたる指は正確むすめに繋がる
わが家は山崎断層の真上なり地震あるまでは方間の家で良し
両足が透き通るがに大寒のいや冷えまさる一日なりけり
間伐の出来ぬ男とみたりけり人夫が倍も伐りしと怒るは
カタカナの連発きくはもう嫌ぞパソコン習ふにひらかな話せ
ことのほか戦後といへる言葉好き戦後よ戦後つづけよ続け
高見盛が力んで力んで見せるからに肩のあげさげ背のびもしてみる
上屋敷はつ 作品集