ここにゐて鼓打ちゐる尉鶲大原總一郎は何と聴くらむ
初雪のたちまちとけて蓬見ゆその畔みちのぬくき日のわれ
こがらしに道の枯葉は広がりていづこに留まりて土に還るや
老農夫小鹿捕へて飼ひをれば深山にひびく鳴き声哀し
鵯のかん高く鳴く声聞くも一人寝の床に夢をつづけむ
秋立つや百羽のつばめの電線に居並ぶ静寂旅立ち近く
かの夜に線状降雨の通過して山腹崩落百五十年目の「ムラ」
杉坂の険しき峠を登りくれば平賀元義の松おほき古株に
五月雨に早苗踊りて蛙鳴き燕のニンフ笑ふがごとし
桜にはさびしさはなし遅咲きの梅は淋しく光のなかに
飛びきたる蝶は五種なり故問へば農薬づけの山里なりとぞ
夕されば畑の菜の花黄に沈み寂しき山に鹿鳴くを聞く
山下 三景 作品集