久久の蒜山三山美しきジャージー牛は屋内にして

白木蓮のつぼみの産毛の優しさは春待つ君の思ひに似たる

パスポート無くても我が家の茶の間から世界遺産の様様を視る

手づくりのかしは餅をば仏前に姑と作りて供へたりしよ

杉木立に霧雨降りゐる高野山の世界遺産の墓の静まり

新緑の山裾染めいる紅つつじ讃岐の山は我等を迎へて

青き海見乍らつきし石垣島珊瑚の海はダイビングを呼ぶ

我晴れて続きて小豆むしりをり夫と二人でラジオ聞きつつ

河鹿園に泊りし客の数々の残して行きし筆の跡見る

もみぢなす山山の上の茜空鷺は一声鳴きて飛びゆく

朝まだきをひよはぴいぴい鳴きたてて椿の花粉に頬を染めいる

棚田吹く風は優しく苗をなで田植ゑ終りてくつろぎをりぬ

真夏日にむくげの花の紫に暑さを浴びする蝉しぐれかな

春一番戸口におきし野菜籠飛んでころがり走り去りたり

粟井庄の萌黄色なす山山の日ごとに変る濃くはた薄く

瀬戸の海に夕日が沈む美しさ茜にもえて映れるかげも

真夏日に鬼に見えたる蟷螂よ柿の木に鳴く蝉を捕へて

結願の八十八番大窪寺白衣の背に朱印を受けをり

箱庭に楽しみに植ゑし蕗のたう薄き緑の花ほころびぬ

春雨にうすれて見ゆる能登香山温もりあるがにふんはりうかんで

早苗田に下り来て歩む白鷺の稲踏む姿憎くも麗はし

咲きわけの芙蓉の花のそばを来て友を見舞ひて無事を喜ぶ

遍路道にひとつらなりの曼珠沙華くづれし土塀にそひて咲きをり

試案して買ひし三鉢のアマリリスやうやく蕾の出でそめにけり

雪の日日晴るる日待ちてボールうつ今日も競うて老いを感じず

通院のたびごと眺むる那岐の峰春来たれるに今日も真白に

休耕田の草刈り行けば目の前に雉が飛び立つ卵を置きて

小豆まきすませて今日も雨待つに雷鳴遠く雨を運ばず

実生より育てて熟れしミニトマト甘く美味しくサラダのそへに

 原  幸子 作品集