短歌会にて皆と仲良く勉強し成りし短歌は努力のあかしぞ
夕空を鴉が啼きつつ飛び行くに如月の寒さ肌に沁み入る
山畠に柚子を取らんと我が行けば遠くより黄色に色づくが見ゆ
意味深き成人の日をわが家の孫も来年は迎ふるならむ
山際の田に行き見れば猪出で稲は踏まれてぬた打つ場と化す
猪が田を荒すに急ぎ稲刈れば予想に近き収穫ありぬ
東京に住み居る孫の結婚式よ花嫁衣装に我は涙す
久びさに墓参をしたり子と夫に年の過ぎゆく速さを告げやる
男子バレー苦労を乘り越え十六年オリンピック出場は努力の賜
庭つつじ白桃赤と咲きゐるをしばし眺めて心安らぐ
孫等よりの喜寿を祝へる「メッセージ」読みつつ我の目はうるみ来ぬ
百日草霜降るまでも咲き続くこの花のやう我も頑張る
栗の実も今が盛りか口あけてぽとりぽとりと実をおとしをり
お盆来て多くの位牌を祀りたり先祖のお陰か家族あること
東京に住み居る孫の結婚式よ花嫁衣裳に我は涙す
やうやくに芽の出でたるを鴉きて頭を切られて豆苗植ゑ継ぐ
蔓豆の手となる竹の遅れしに何処に行くのか地を這ひてゐる
青き田に鹿の足跡残りをり何にや行きつ戻りつせしや
高校生となりたる孫の背広姿成長せしかなしばしを眺む
箱の中に静かに座すお雛さま大きく孫の成長したれば
孫娘がわれの手をとり爪をぬるしばし気持も若きに返る
新年に女孫来たりて再会す嫁ぐ日近き面差しにして
柿むきて吊して見ても食ぶるものあふるるばかりでこの国の世に
八葉と云ふ名の陰でネズミ講人びと騙して千五百億円
見上ぐれば桜の花の散りをりてまた来年もと逢瀬を約す
新緑の別府の町よ湯けむりよ眼下に広ごる街の静けさ
不況の中を世界新記録の金メダル北島幸介百米平泳ぎ
寒さの中にほのかに香る梅の花菅原道真の詩想ひてをりぬ
ハルウララ負けても人気の牝馬なりひたむきに走る努力を買はれ
小春日よ小豆をこなすに好き日なり槌を振りつつ心地よき汗
瀬戸の海さざ波立ちて船は行く小豆島の旅友と語りつつ
香港に旅して帰り大夜景の想ひ出胸に気力養ふ
秋祭り子供神輿も無事済みて静まる村に夕暮の鐘
一年を何事もなく来し節分孫と豆まく賑やかなる夜
合併せし美作市新議員立候補の遊説の声春日に流る
髪のびて孫が短く切って呉れ鏡に写す顔少し「晴れ」
孫娘花柄のゆかたを身につけて笑顔を見せて花火見に行く
小豆もぐに肥料が過ぎて茎ばかり少量なれど自作のあづき
初霜で地這ひのきうり霜枯れぬ防寒を忘れし我の責にや
手入れして楽しみをりし西瓜なりいそいそ行けば皮のみなりけり
淡雪に痛き足をば取られじと気を遣ふなり老の身なれば
正月三日雨降る事は豊年の証とぞ云ふわが邑に降る雨
雪吊りの終りて冬を待つ兼六園友と語りつつ散策するなり
足早に寒さ近づき山山に雪は降りたり葉の青きまま
能登香の里の苅り田の上を白鷺のいういう飛びてのどけき夕暮れ
春日座の五時の鐘鳴り子供等は家路に急ぐ夕暮の村
水やりて漸く実りし茄子なり「ありがとさん」とそっと撫でみる
稲刈りし後はひつそり人影なく何を探すか鷺歩みをり
晴れの国岡山国体終りたり天皇杯も皇后杯も受け
家毎に亥の子を搗きて子供らは夜の道を行く提灯持ちて
孫の風邪長びかぬよう思ひつつ一週間すぎて孫も笑顔よ
映画にて「男たちの大和」見てをれば主砲の前に兄の姿が浮かぶ
お釈迦さまの入滅偲ぶ法要に檀家集ひて御詠歌唱ふ
父母達の植ゑし桜が大樹と成り川辺に咲くを見上げてをりぬ
猪と鹿防がむと張る紐に金紙結ぶぴらぴらぴらと
美作の十七ヶ寺を巡り行く大師と共に心経あげつつ
夜の空打上花火は輪をゑがき火花を散らす平和日本
コンバインは音を響かせ隣り家の稲刈り始まる八月下旬
木の剪定庭師の真似をしてみをり新しき鋏使ひながらに
西条柿じつと見上ぐれば干柿にと柿が言ひをり今年も吊さむ
横林冨砂子 作品集