装ひて額にをさめし野辺の花その愛らしく香りさへして

在りし日の母ゆづりなる早起きの厨に今朝は柏餅作る

一人には惜しいと思ふ緑濃きかぜを五体になれし道ゆく

職退きて時計はづせし気楽さに晴耕雨読はや三年目

二人居の居間にも春か華やかに雛一対あり友の手仕事

在りし日の母が好みし粟倉の元湯に今日も訛あふるる

夕やみに口笛を吹くがにラブコールする鹿よ害獣と思へぬ優雅さ

父祖よりの慣ひか夫の花筒を打ち込む音が澄みてこだます

北陸の「生涯農婦」の知恵もらひ今年は切り干しハンガーに干す

 津田 次恵 作品集