住吉神社に参りし二人の女孫より「婚活」するよとメールが届く

散る紅葉光を引きて流れ行く真昼の村の細谷川を

山径の岩間に咲けるは野菊らしかそけき風が香をはこびくる

散る紅葉光を引きて流れ行く真昼の村の細谷川を

正しくも母に似たるとはらからが祝ひてくれぬ今日母の忌に

思ひ遣り思ひ煩ふこともあり村の寄り合ひの長談義果つ

武蔵の里鎌坂峠のつつじ園悠悠およぐは鯉幟り四千

勝山の雛壇見つつ懐へるは我ら九人の雛飾りし母

父母に夫を送りし我なれば誰が「おくりびと」となりてくるるや

病む夫と子育の如き二十年逝きても忘れ得ぬ夫の仕草よ

幼き時孫の描きしぢぢばばが色あせしかべになほもはりつく

ガガガガと音立てて行くコンバインに鎌ふり上げて逃げゆくかまきり

トマト西瓜空より狙ふ鴉共ゴーヤは要らぬか食べごろなるぞ

それぞれの暮しに戻る孫子らが今年もまめに暮らせと言ひおく

老人の集ふを佃煮の如しといふ若き女性が笑ひ放ちぬ

トマト西瓜空より狙ふ鴉共ゴーヤは要らぬか食べごろなるぞ

初めてのボーナス貰ひし男の孫が爺に供へて婆が使へと言ふ

社会人一年生の女の孫におはやうコール今日もさわやか

 岩本 敏子 作品集