縮みといふ布にも似たる吾が腕静脈浮き出てしわしわとなりて

二十四年の心の痛み癒さむか薄雲かかる三十夜の月に

吊し柿日日しなやかになりゆくを手に確かめをり昏れ早き午後を

少しづつ機能の衰えゆくならむ我が家の階段確かめつつ上る

盛りすぎ雨にうつむく牡丹に詫びつつ花首切りてゆくなり

あたたかき飯にのせたる花かつを命あるごとくねりてをりぬ

肉の入らぬ肉てん焼きを昔風に焼けば美味しとほほばる吾子ら

昼寝覚め泣き出したき身のだるさみんみん蝉のかしましく鳴き

船越の峠を曲がるたび毎に「猪注意」の絵看板あり

群れなして泳ぎゐし魚の姿なく水浅き川冬日の透る

白妙の雪の重みに絶へかねて折れし南天赤き実をこぼす

幸せは何処にもあると思ふ日日杖を頼らず歩けることも

万全の装備をなして出でゆきぬゲートボールの観戦なれど

 内海美和子 作品集